理学療法士は、怪我や病気で身体機能が低下した患者様に対して運動療法や物理療法といったリハビリテーションを提供する医療職です。
医療職=高収入と考える人も多いかも知れませんが、実際は、理学療法士の給料は低いと言われています。
この記事では、元理学療法士からトレーナーに転職した筆者が、理学療法士の給料が低くて上がらない理由、収入を上げる方法を解説していきます。
現在、理学療法士として働いていて給料面で悩んでいる、もっと収入を伸ばしたいと考えている人は、ぜひ最後まで読んでください!
理学療法士の給料が上がらない理由

理学療法士の給料が低く、上がらないと言われている要因は、以下の3つです。
理学療法士の数が増え過ぎている

下図は、平成31年に厚生労働省が発表したグラフです。

このグラフを見ると、2026年には理学療法士の供給が需要を上回り、2040年には1.5倍もの供給過多になる予測になっています。
高齢化社会の日本では、理学療法士の需要は無くなることはありませんが、供給がこれだけ多くなることを考えると、今後理学療法士の希少価値は上がりづらいと考えられます。
理学療法士の数が増え過ぎているという事実が、給料が上がらないひとつの要因となっているのです。
医療費の削減

高齢化の一途を辿る日本では、医療費の財源が問題となっています。
総務省統計局によると、日本では2024年時点で、65歳以上の高齢者の割合は人口の約30%に上っていると言われています。
高齢者は、若年者と比較して病院にかかることが多いため医療費は増加、一方で社会保障の担い手である若年者は減少傾向にあり、医療費の財源がひっ迫しているのです。
そのため、政府は医療費削減の働きかけを行っており、その結果として医療機関の収入は減少、そこで勤める理学療法士の給料も上がりにくいのが現状です。
一方で、2024年には診療報酬改訂にて、医療従事者(理学療法士を含む)の給与引き上げが行われました。
看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のアップさせることを目標としています。
職場によって違いはありますが、理学療法士は大体、月額換算で5,000円前後の昇給が実施されるそうです。
昇給は嬉しいですが、最近の物価高を考えると、十分とは言えませんね。。。
スキルがあっても給料に含まれないから

理学療法士は、時間単位(20分単位)で診療報酬の点数が振り分けられるため、スキルが高いからといって給料が上がることはありません。
多くの患者様に関われば、診療報酬の点数を増やすことは可能です。
しかし、20分を1単位として算定されるため、対応できる患者様の数には上限があります。
どれだけ時間をかけて勉強をしても、直接給料に反映されることが無いため、収入は上げることが難しいでしょう。
もちろん、給料は上がらなくても患者様に質の高いリハビリを提供する上で、勉強は欠かせません。
理学療法士の給料相場

理学療法士の給料は安いと言われますが、「実際どのくらい安いのか」「他職種と比較して本当に安いのか」気になる方は多いのではないでしょうか?
ここからは、理学療法士の給料相場について、他職種と比較してお伝えしていきます。
他の医療職と比較すると給料は安い
国税庁の「民間給与実態統計調査」によると、令和4年度の給与所得者の平均年収は「458万円」と出ています。
一方、「 令和4年賃金構造基本統計調査」を見ると、理学療法士の平均年収は「約426万円」となり、全体平均よりもやや低いことがわかります。
理学療法士とその他医療職との平均年収の比較は以下のようになりました。
職種 | 平均月収 | 年間賞与・ その他特別給与 | 平均年収 |
理学療法士 | 29万7,700円 | 69万4,000円 | 426万6,400円 |
医師 | 124万9,600円 | 111万9,800円 | 1611万5,000円 |
看護師 | 34万2,300円 | 75万6,400円 | 486万4,000円 |
診療放射線技師 | 35万5,700円 | 86万1,200円 | 512万9,600円 |
臨床検査技師 | 32万1,600円 | 80万8,900円 | 466万8,100円 |
理学療法士の給料は、他の医療職と比較しても低いことがわかりますね。
理学療法士の将来性について

現在、理学療法士として働いている人は、「今後も理学療法士として働いていけるのか」「理学療法士の業界はどうなっていくのか」疑問に思う方も多いはず。
ここでは、理学療法士の将来性についてお話ししていきます。
今後も理学療法士として仕事を続けていくのか悩んでいる方は、ぜひ参考にしてください。
需要は安定している
理学療法士の需要としては、今後も安定していると言えます。
理由は、以下の2点です。
- 日本の高齢化の進展
- 医療費削減
日本の高齢化は進行しており、今後も高齢者の数は増え続けます。
高齢化に伴い、医療機関や介護施設、訪問看護の需要は増加すると考えられるため、理学療法士の需要も安定していると考えられます。
また、医療費削減のために入院期間の短縮が進められており、術後短期間で退院ができるよう、術前のリハビリテーションの需要が高まっていることも要因のひとつです。
今後も理学療法士の数は増え続ける
需要はある程度安定している一方で、先述したように、理学療法士の数は増え続けていきます。
2026年には供給が需要を上回り、2040年には供給が1.5倍になると言われているため、すでに理学療法士の数は飽和状態になりつつあると言えます。
そのため、今後は理学療法士を取り巻く環境は厳しさを増し、理学療法士としての価値を問われる時代になるでしょう。
専門的なスキルを身に付ける必要がある
理学療法士の数が飽和している環境では、自分が希望する分野での活動が難しくなることが考えられます。
自分が活躍していきたい分野で働くには、理学療法士資格はもちろん、認定・専門理学療法士資格を取得して、他との差別化を図っていく必要があります。
理学療法士の収入を上げる方法3つ

ここまで、理学療法士の給料相場や将来性についてお伝えしてきました。
ここからは、現在、理学療法士として働いているけど、「給料が上がらなくて悩んでいる」「理学療法士としてのキャリアに不安がある」という人に向けて、
理学療法士の収入を上げる方法を解説していきます。
主な方法は以下の3つが挙げられます。
管理職になる

理学療法士として、給料を上げる方法は管理職になることです。
経験やスキルを積んで、現場の管理職になれば、役職手当が付き給料アップが狙えます。
管理職になるためには、現場での経験はもちろん、学会への積極的な参加や、認定・専門資格の取得など、周りとの差別化を図るといいでしょう。
多くの時間と労力は掛かりますが、飽和しつつある理学療法士の業界で、人の上に立って活躍していきたい人は、周囲とは異なる自分の強みを身につけておく必要があります。
副業をする

本業の理学療法士の仕事と並行して、副業を始めることで、収入を増やすことができます。
現在でも副業禁止の職場はありますが、副業OKの職場であれば、自分が自由に使える時間を活用して、取り組むのもいいでしょう。
副業と言っても様々ありますが、個人的には本業以外でのアルバイトなどの「労働」はあまりオススメしません。
ただでさえ、体力を使う理学療法士の業務に、それ以外の時間でアルバイトなどの労働をしてしまうと、疲労が蓄積されて、本業にまで影響を及ぼしてしまう可能性があります。
最近では、自宅で取り組める副業(専門知識を活かしたSNS発信やブログ)も多くあります。
上手くマネタイズできれば、収入の柱になるでしょう。
ただ、これらの副業は、収入が発生するまでは多くの作業時間や継続が必要になります。
転職する

先述したように、理学療法士である以上、大きな昇給が見込めないのが現状です。
できるだけ早く収入を上げたいという人は、転職をするのもひとつの手段です。
現在の職場の給料に不満があるのなら、より良い待遇をしてくれる職場に転職して理学療法士としてのキャリアを継続することもできます。
また、理学療法士としてのキャリアに限界を感じている人は、自分の知識や経験を活かして、より高収入が狙える他職種への転職を考えても良いでしょう。
私は、理学療法士のスキルを活かしてパーソナルトレーナーへ転職しました!
幅広い視野で求人を探すことで、自分が希望する条件の企業を見つけられるはずです。
個人的には、希望に合った求人を提案してくれたり、書類、面接対策など全面的にサポートしてくれる「転職エージェント」を活用することがおすすめです!
こちらの記事で、理学療法士向けの転職サイトを紹介しています。
現状を変えるには行動あるのみ!

理学療法士の給料が上がりにくい要因としては、以下の3点が挙げられました。
- 理学療法士が増え過ぎている
- 医療費の削減
- スキルがあっても給料に含まれない
今後も増え続ける理学療法士の業界において、大きな収入アップは難しいでしょう。
しかし、行動せずに嘆いていても、現状は何も変わりません。
現状を変えたいと本気で考えているのであれば、やれることは沢山あるはずです。
- スキルを身につけて管理職になる
- 副業で収入の柱を増やす
- 転職でキャリアチェンジ
今から多くのお金や時間を無駄にしたくないという人は、好条件の企業へ転職をするのもひとつの方法です。
いきなり転職活動を始めなくても、自分の希望条件に適した求人があるのかを、あらかじめリサーチしておく事をオススメします!
この記事がみなさんのお役に立てば幸いです。
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