「理学療法士には将来性が無い」
こんな言葉を聞いたことがある人は多いのでは無いでしょうか?
これから理学療法士を目指す人はもちろん、現在理学療法士として働いている人も、気になる話題だと思います。
この記事では、理学療法士から転職した経験を持つ筆者が、「理学療法士は将来性が無い」と言われている理由について、詳しく解説していきます。
将来性が無いと言われる理由3つ

理学療法士に将来性が無いと言われる理由は、以下の3つです。
ひとつずつ解説していきます。
理学療法士の供給過多

理学療法士という職業が誕生して以来、理学療法士の数は年々増加しています。
厚生労働省の発表によると、2026年には理学療法士の供給が需要を上回り、2040年には1.5倍もの供給過多になると言われています。

高齢化社会の日本では、理学療法士の需要は無くなることは考えづらいですが、需要に対して供給がこれだけ多くなることを考えると、今後理学療法士の希少価値は上がりづらいと言えるでしょう。
給料が低い

理学療法士は、他の医療職と比較して給料が低い傾向にあります。
「 令和4年賃金構造基本統計調査」を見ると、理学療法士の平均年収は「約426万円」となり、他職種と比較して低いことがわかります。
職種 | 平均月収 | 年間賞与・ その他特別給与 | 平均年収 |
理学療法士 | 29万7,700円 | 69万4,000円 | 426万6,400円 |
医師 | 124万9,600円 | 111万9,800円 | 1611万5,000円 |
看護師 | 34万2,300円 | 75万6,400円 | 486万4,000円 |
診療放射線技師 | 35万5,700円 | 86万1,200円 | 512万9,600円 |
臨床検査技師 | 32万1,600円 | 80万8,900円 | 466万8,100円 |
数百万円にもなる高い学費を払って学校を出ても、現場に出れば給料が安いという現実から、将来性を感じられないという理学療法士は多いです。
給料が上がらない

給料が上がらないというのも、将来性を感じられない一つの大きな要因と考えられています。
その要因となっているのが、「医療費の削減」です。
高齢化の一途を辿る日本では、医療費の財源が問題となっています。
総務省統計局によると、日本では2024年時点で、人口の約30%が65歳以上の高齢者になるそうです。
高齢者は若年者と比較して病院にかかることが多いため、医療費は増加し、一方で社会保障の担い手である若年者は減少傾向にあるため、医療費の財源がひっ迫しているのが現状です。
そのため、政府は医療費削減の働きかけを行っています。
その結果として、病院など医療機関の収入は減少、そこで勤める理学療法士の給料も上がりにくいのが現状です。
当時、数年先輩の理学療法士の給料が新人の自分とほぼ同じで驚いた記憶があります。。。
2024年には、診療報酬改訂によって医療従事者(理学療法士を含む)の給与引き上げが行われました。
看護職員、病院薬剤師その他の医療関係職種について、令和6年度に2.5%、令和7年度に2.0%のアップさせることを目標としています。
理学療法士の場合は、職場にもよりますがおおよそ5000円ほどの昇給となるそうですが、近年の物価高を考えても、十分とは言えません。
体力が重要な仕事

理学療法士は患者様のリハビリはもちろん、介助や移乗など、体力が必要になる仕事です。
体力勝負の一面もある仕事なので、「定年まで仕事を続けられるのか」と不安になる人も多くいます。
理学療法士も、加齢とともに体力的に仕事がきつくなってくることが予想されるので、その点も将来性が無いと言われる理由です。
理学療法士に将来性があると言える理由3つ

理学療法士に将来性が無い理由をお伝えしていきましたが、今すぐに理学療法士という仕事の需要がなくなる訳ではありません。
ここでは、理学療法士に将来性があると言える理由をお伝えしていきます。
今すぐ需要がなくなることは無い
先述したように、日本国内は少子高齢化が進んでいます。
今後も高齢者の割合は増え続けていくと予想されるため、理学療法士の需要が無くなるとは考えづらいのが現状です。
そのため、今後も理学療法士という仕事は必要とされることが考えられます。
しかし、理学療法士の供給も増えているため、自分の価値を証明できる理学療法士になる必要があります。
AIや機械による代替が難しい仕事
総務省が発表している資料、「人工知能(AI)導入で想定される雇用への影響」では、以下のように言われています。
「米国の職業701種について、将来人工知能(AI)や機械が各職業を代替することができる技術的な可能性を分析した研究では、就労者の47%が代替できる可能性の高い職業に従事していると指摘されている。
「人工知能(AI)の進化が雇用等に与える影響」
この研究を日本に当てはめた場合、米国と同様の傾向となり、将来人工知能(AI)や機械が代替することができる技術的な可能性が高い職業が49%であるとされた。
実際に、リハビリテーションの分野でもAIが活用されている部分もあります。
しかし、患者様に対する直接的な治療や他職種との連携などに関して、AIが代わることは現状難しいです。
そのため、理学療法士の仕事がAIに代替されることは無いと考えられます。
理学療法士の活躍の場は広がっている
理学療法士と言えば、病院やクリニックといった医療機関に従事しているイメージが強いですが、最近では医療分野に限らず活躍の場は広がっています。
- スポーツ分野、障害者スポーツ分野
- 介護施設、訪問介護ステーション、デイケア
- 福祉関連施設、福祉用具、医療機器メーカー
- 養成校教員・研究機関
- 行政
さらには、理学療法士の知識や技術を活かして一般企業でも活躍している方もいます。
このように、理学療法士の知識や技術を活かすことで、活躍の場は広げていくことが出来るのです。
今後の社会のニーズの変化に合わせて、さらに活躍の場が広がることも予想されます。
将来性のある理学療法士になるために

ここまで、理学療法士の将来性の有無についてお伝えしてきました。
これまでの傾向から、今後も理学療法士の数はさらに増加し続け、ライバルは増えていくことが予想されます。
そんな理学療法士業界で、将来性のある理学療法士として生き残っていくためには、どうすれば良いのか。
今後も必要とされる理学療法士になるには、以下の3つがポイントになります。
管理職に就く

現場の管理職など、役職を得ることで自分の価値を高めることが出来ます。
管理職になれば、リハビリ業務以外にも、人材の育成や部署の運営など、幅広い役割を担うことができます。
その他、役職手当やキャリアアップによる昇給も見込めるでしょう。
専門資格を取得する

専門理学療法士資格や認定理学療法士資格など、専門的な資格の取得すれば、理学療法士としての価値を高めることが出来ます。
なぜなら、理学療法士として登録されている人の中で、専門理学療法士資格を取得している人は全体の3%、認定理学療法士資格を取得している人は9%程度だからです。
この数字を見ても、専門資格を取得している人は、専門的な知識を持っている希少価値が高い人材と分かります。
資格を保有している理学療法士は、現場での信頼が高まったり、転職で有利になるでしょう。
職域を広げる

職域を広げることで、自分の価値を高めることが出来ます。
先述したように、理学療法士の知識や技術を活かせる分野は広がっています。
様々な分野を経験して知識・技術を身につけておくことで、社会のニーズの変化に柔軟に対応できる理学療法士になることが出来るはずです。
理学療法士として将来性に不安を感じる人は

ここまで読んで、「それでもやっぱり不安が大きい」「今の現場で活躍できる気がしない」という人は、転職を視野に入れるのもひとつの方法です。
条件の良い職場に転職する

現在の職場で将来的に不安を感じるようであれば、今よりも条件のよい職場への転職がおすすめです。
職場環境や給与、役職などの待遇に不満を感じていて今後が不安という人は、環境を変えるために転職をすることで改善できる可能性はあります。
給与や役職、職場環境が今よりも良い待遇の事業所へ転職をすることで、理学療法士として長く活躍していけるはずです。
こちらの記事では、理学療法士におすすめの転職サイトをまとめているので、ぜひ参考にしてください。
転職で失敗しないためにも、求人を選ぶポイントなどを抑えておきましょう。
他職種にキャリアチェンジ

理学療法士の業界から思い切って他職種にキャリアチェンジするのも手段のひとつです。
他職種に転職をすることで、理学療法士特有のストレスや不安から解放される可能性があります。
理学療法士としての経験やスキルを活かせる仕事も多くあるので、今まで培った経験を活かせる仕事であれば、転職も有利に進めることが出来るでしょう。
こちらの記事では、「他職種に転職する理学療法士向けの転職サイト」をまとめています。
将来性があるかどうかは自分次第!

今後は理学療法士を取り巻く環境は厳しさを増し、理学療法士としての価値を問われる時代になると考えられます。
しかし、落胆する必要はありません。
今後も理学療法士の需要はありますし、自分の価値が高めて周囲との差別化ができれば、むしろ必要とされる存在になれるはずです。
自己研鑽を重ねて、理学療法士として価値を高めていくことが大切です。
それでも、理学療法士としての将来に不安が大きいなら、思い切って転職をして環境を変えるのも良いでしょう。
今からの行動次第で、未来は大きく変えられるはずです。
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